Interview

Interview with 原島政司さん:お茶の千代乃園

Editor

「600年の歴史ある奥深き山間部で育む現代人の心をほぐす一杯 ー 千代乃園の原島政司氏に聞く」

福岡県奥八女は八女市の山間部を指す。ここは600年の昔から茶の栽培、生産が行われてきた八女茶発祥の地。奥山の急峻な丘陵地で丁寧に育てた茶葉から生み出されるお茶は、スッキリとした味わいと上品な香りになる。原島氏が現代の人々にお茶を通して感じてほしい世界観や、自身のカフェを通じた茶文化の発信の奥にあるその思いを聞く。

MC

今日は奥八女の「千代乃園」、原島さんにお話を伺います。まずは、先日伺った山の茶畑、本当に見事な環境でした。

原島(千代乃園)

ありがとうございます。うちの畑は、もともと茶畑だったところもありますが、昔の棚田や小さな田んぼを開墾して、山の斜面を活かした場所も多いです。

MC

八女といえば平地の玉露が有名な印象でしたが、実際は奥の山あいでお茶が始まったんですね。

原島

そうです。八女茶の始まりは黒木町・笠原の山間部。800年ほど前にお坊さんが種を持ち帰ったのがきっかけだと言われています。そこから平野部へと広がっていきました。

MC

中国や台湾、スリランカの高級茶もやっぱり山間部のものが多いですもんね。

原島

霧が出て、昼夜の寒暖差がある環境は、良質なお茶が育つ条件。日本でもかつては山のお茶が高級とされていた時代がありました。

2|“一服”を支える、小さなパッケージとすっきりした味

MC

千代乃園さんといえば、少量パッケージでの多品種展開が特徴的ですよね。

原島

昔は200gや300gが主流でしたが、今は風味の変化を避けるためにも小さなサイズが主流に。飲みきって、また別の品種を試してもらう——そんな楽しみ方ができるようにしています。

MC

緑茶もすっきりした味わいが印象的でした。狙いとしては?

原島

はい。狙っているのは、喉が渇かないお茶。味が強すぎず、身体にしっとり染み込むような飲み口です。濁らず、透明感のある水色を目指していて、日常の中でスッと飲める煎茶を目指しています。

MC

なるほど。お湯を注いで1分で一服できる、そんなお茶が身近にあるってすごくありがたいですよね。

原島

そう思ってもらえたら嬉しいです。TPOに応じて選べるお茶、そういう日常の一部になればと。

3|発酵茶、カフェ、そして“対話するお茶”へ

MC

最近は紅茶やウーロン茶などの発酵茶にも力を入れているそうですね。

原島

もともと興味がありました。試験場時代に紅茶を少し学んだことがあって、ベニフウキを中心に、6種類ほどの品種で紅茶やウーロン茶を試しています。品種によって香りや飲み口が変わるのが面白いですね。

MC

中でもヤブキタをウーロン茶にしているのが印象的でした。

原島

ヤブキタって発酵茶に向かないと言われがちですが、きちんと狙って作れば爽やかさと渋みのバランスがいいお茶になります。もっと再評価してほしいなと思っているんです。

MC

そしてそのお茶を体験できるのが、カフェ「茶寮」。こちらは娘さんが中心で運営されているんですよね。

原島

はい。いつかやってみたいと思っていた場所でもあります。カフェではワークショップも開いて、飲み手に「どうしてこの味になったか」「どう楽しむか」を伝える場にしています。

MC

正解の飲み方があるわけじゃない、というメッセージがとても伝わってきました。

原島

お茶は嗜好品。だからこそ、好きな入れ方・好きな飲み方を見つけてもらいたいんです。カフェは、そのための「対話の場」なんだと思います。

インタビューの音声ではもっといろいろと千代乃園さんのことを聞いています。ぜひ聞いてみてください!

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