大暑(7月22日~8月6日)
二十四節気のうち一番暑い頃、大暑 たいしょ と読む。文字を見ているだけで暑くなってくるが、夏の最後の節気で、次の節気にはもう秋が始まってしまう。
太陽の力が最も強い夏至ではなく、その後の大暑に暑さが厳しいのは、太陽の力で地球が温まるのに時間がかかるから。海水から地表から徐々に温められ、半月ほどかけて気温がじっくり上がってくる。明るく力強い夏を存分に健康に、そして晴れやかに楽しみたい。
この季節を愛でるのにふさわしい、夏らしい風物がいくつかある。抜けるような夏空に浮かぶ「雲」もそのひとつ。ボリュームのある「積雲/せきうん」、モクモクと立ち上がる「入道雲/にゅうどうぐも」、力強い姿、青と白のコントラスト、生き物のように変化する形、夏の雲の魅力は自由な解放感へと広がっていく。
音によって「涼」を運んでくれるのは「風鈴/ふうりん」。爽やかな音色は、風の存在を可視化して涼しさを届けてくれる。素材も様々、音色もいろいろ、姿かたちを選ぶ楽しさもある。元々は魔除けとして使われていた「風鈴」は、日本独自の愛される夏の文化として現在に至る。
朝晩の打ち水、一息つく夕涼みなど、エネルギー満ちる熱気の中で、少し立ち止まることもまた心地よいひとときとなる。
お茶でも五感により夏の暑さの中で涼を感じとることができる。お湯を沸かすのも躊躇する気温が続くが、水や氷で淹れる冷茶が大活躍する。冷茶の作り方はいくつかある。
氷だけで淹れる氷出し低温で淹れるため、旨味甘味が凝縮された濃厚な味わいになる。
水で淹れる水出し水に茶葉を入れて冷蔵庫で一晩おくだけ、一番手軽な方法。旨甘みとともに爽やかさ、瑞々しさを楽しめる。
お湯で淹れたあと氷で急冷する冷茶急な来客など時間がない時には急冷。香りを出すことができ、渋みも適度に感じるので味わいに力強さと複雑さが生まれる。
緑茶は身体を冷やす効果もあるので、体温調節の難しいこの季節に上手に取り入れたい。冷茶には湯気は無いが意外と香りがよく、色もクリアで美しく見た目にも涼しい。透明感のある色、響く氷の音、グラスから伝わる冷たさ、爽やかな香りと味わい、暑い季節ならではの美味しさを有難くいただこう。
【菓子】かんざらし涼をとる菓子は様々あるが、一段と可愛らしいのが長崎県島原市の郷土菓子「かんざらし」。
島原市の豊かな湧き水をたっぷりと使い、ひんやりと冷やした小指の先ほどの小さな白玉団子を甘い蜜に浮かべたお菓子。白玉の材料が、大寒の頃に水にさらして作られることから「寒ざらし」と呼ばれる。白玉団子をしっかりと水につけることで、表面をとろっとさせて独特の食感を作り出す。合わせる蜜は店や家庭によって様々、人それぞれに懐かしい味がある郷土菓子らしい甘味。甘くて冷たい味わいを、夏の暑さとともに大切に記憶に刻む。



