夏至(6月21日~7月6日)
「夏至」の始まりの日は、一年で一番太陽が高く上り、日照時間が最も長くなる日。昼が長く、夜が短く、身体にエネルギーが満ち、太陽の力が最も強く感じられる日である。「夏に至る」とあるが、実際には雨が多い時期。作物が育つために大切な恵みの雨と思い、雨天を慈しむ心持でありたい。
6月末には一年の半分の区切りとして「夏越の祓」が行われる。これまでの半年の穢れを払い、感謝をし、これから後半が恵まれるよう願いを込めて行われる行事。神社に立てられた大きな茅の輪をくぐり、穢れを払い身を清め、これからの半年の無業息災を願う。
夏至の後半は「半夏生(はんげしょう)」と呼ばれる。半夏生は花を咲かせる7月初旬に、葉の一部だけ白く変化することから半化粧の意で呼ばれる植物。半夏生が咲く頃になると田植えが終わり、梅雨明けが近い時期となる。この季節に足を運びたくなるのが、京都の建仁寺にある両足院。両足院の庭は半夏生が見事に茂り、静謐な室内から眺める緑と白の景色は清らかで美しい。建仁寺は日本でのお茶の始まりとされる栄西禅師が建立したお寺で、境内には茶碑があり茶の樹も植えられている。中国から持ち帰ったお茶に、恋焦がれ心躍らせたのであろうか、禅の修行とともに静かな時を過ごしたのであろうか。
茶の樹を眺めながらはるか遠い時代に思いをはせる。
この季節の変わり目とともに「新茶」の呼び方も変わる。新茶の季節は6月末までと言われる。7月に入るとその年の「一番茶」と呼ばれ、上質で美味しいお茶でも「新茶」とは呼ばれなくなる。違いは、香り。新茶の香りと言われる青葉のすっきりとした香り、すこしぴりっとくる爽やかな風味、これらが自然と消えていってしまうのが6月末頃。季節限定、儚いからこその魅力で、新茶を有難く思うのかもしれない。もちろん新茶の香り風味がなくなっても、品種の香りや製茶の技から生まれる香りは残る。春一番に摘まれた美味しいお茶であることには変わりがないのでご心配なく。新茶の風味が消えると、栽培された茶葉の力や製茶されることによる魅力などがわかりやすくなり、お茶本来の美味しさを味わう楽しさがある。



